僕が小学生の時
父は病気で亡くなったんです
父親の通夜が営まれた深夜に
僕はとんでもない事件を
目撃してしまいました
葬式場に成ったお寺さんの御堂には
父方の祖父母と、
親戚の老人
4~5人が疲れて眠っていた
後の親戚は近くの旅館に
部屋を取り
そちらで休んでいる
日中は未だ暖かい頃だったが
夜中は流石に少し肌寒く皆
座布団を敷き布団かわりに
毛布を被り熟睡している僕は
寝ぼけ眼で母を探したが姿が見えず
心細い思いをしながら
慣れぬお寺の
トイレにいったんです
ビビリな僕は
お寺の中の真っ暗な廊下を歩く勇気もなく
深夜にお寺のトイレ行くぐらいなら
立ちションの方がマシだと外に出る
御堂の階段を降り
そこの隅で済ませようと思い
石畳の端に行くと
微かな話し声が聴こえてきた
母の声だと直ぐに気付いた僕は
声の方に向かおうとした
石畳の角を曲がろうとした時に
母の姿が暗闇の中に見え
僕は思わず足を止める
最初は誰か分からなかったが
男の人の胸に顔を埋め啜り泣く母の声
そんな母の背中を
擦るようにする男の人
会話の内容は思い出せないが
母の背中を擦りながら
自然に唇を重ね合わせ
母も唇を受け入れキスをしている
母と男は二人は暫く
そのままで接吻していた
唇を離し男の人の声で
相手が誰だか分かった
家で働いている若い職人だ
職人の言葉に母は
何度も頷いている
その後に職人は母を
抱きしめると再び唇を重ねていく
職人の手先が
母の喪服の裾を開こうとする
唇を重ねながら手先を拒む仕草の母
喪服の下の真っ白な襦袢が
暗闇に浮かび上がる
父の通夜に母が不倫している!
母の襦袢の中に
手先が消えて行くと
母は身を捩り逃げようとする仕草
抗う姿は直ぐにおさまり
母の荒い呼吸が聴こえ
母の喪服の中に手先を沈めながら
母の耳元で何かを囁く職人
母は時折、身体をビクンと
震わせるような仕草で頷いている
そんな時間がどれくらい続いたのか!
十分か二十分か
職人の手先は喪服の
裾から抜き出された
僕は尿意も忘れ、
そこから後ずさるように離れ御堂に戻った
それから1時間ぐらいだろうが
僕は母の不倫現場を見た興奮と
苛立ちで眠れないでいると
二人が足音を忍ばせるように
御堂に戻って来た
今にして思えば
母と職人は父親が亡くなる以前から
そんな不倫関係に有ったのだろう
しかし、わざわざ
父親の通夜の時に逢引する事はないだろう
と僕は狂いそうな程怒り
僕は中学生になっても
その不貞を犯した母に
対する怒りは収まらず
グレて不良の道にいったのだが
その話は関係なくなってしまうので
ここまでにしときます