私より四歳下の妻は、四十四才。
飛び切りの美人とちまたでは言われていますが、私としては顔立ちは、端正なほうだと思っています。
元々細身な体型も、年齢相応に崩れてはいますが、やや薄く、肉のつき掛かった腰回りなどは、見ようによって、それはそれで魅力的と言えなくもありません。
ネットで知り会った岡本氏に言わせれば、人工的な美魔女の美しさより、熟女は、腐り掛けに限るそうです。
岡本氏とは、非通知の電話を十数度、動画像の交換を含めたメールでの遣り取りは、すでに、百通信を越えていました。
身元が確かで、同年代のセックスに熟達した巨根男性、造園業を営む岡本氏は、私の出した条件にぴったりだったのです。
寝取られに関しては、構想十五年、説得四年半、難攻不落の妻を前に、万策の尽きたと諦め掛けた頃、生返事ながら、思い掛けなく、一度だけを条件に、了解を得ることができたのです。
妻の心境の変化について、思い当たることが一つあります。
それより少し前、足の甲に痺れを感じていた妻は、義姉の勧めもあって、その頃、駅裏の整骨院に通い始めていたのです。
私にとって、それは、妻を責めたてる絶好の材料となりました。
夜、妻の股間に顔を埋めながら、施術の一部始終を重箱の隅をつつくように聞き立てるのです。
「尻の上に跨がられて、亭主以外の男に腰を揉まれる気分はどうだ?」
「跨がられてなんかいないわ…」
「わかるもんか…」
「変態ね…」
「変態だよ…
だから何度も頼んでるんじゃないか…
よぼよぼの爺さんに腰を揉まれるより、いっそ、ギンギンの他人棒を突っ込んで貰うほうが、こっちは、気持ちが楽だよ…」
週に二回、一月半ほど通って、妻は整骨院に行かなくなりました。
数日後、相変わらずの早漏チンポからサックの垂れるのを見ながら、妻が小声で呟いたのです。
「ほんとに一度だけにしてくれる?」
「勿論だよ!いいんだね…」
「わからない…
あなたに、委せるわ…」
あれだけ詰問を浴びせ続ければ、妻は施術を受けている最中に、夫である私を意識せざるを得なかったのでしょう。
高齢だが腕の立つマッサージ師であることは、義姉からも聞いていましたし、数十年、同じ場所で営業を続けていることからしても、けっして、怪しげな整骨院でないのは確かでした。
妻は、たぶん、施術を受けながらも、傍にいる筈もない私の視線を、いつの頃からか、感じるようになったに違いありません。
図らずして、私が散々に吹き込んだ、夫の眼前で他の男に抱かれるという状況が、整骨院において、擬似的に設定されたのです。
高齢のマッサージ師の腰や臀部への施術を、見知らぬ男の愛撫へと置き換えて、躯を反応させてしまう、そのような瞬間が、妻にはあったのかもしれません。
整骨院に行かなくなったのは、現実と妄想の間にある埋め尽くせないギャップに気づいたせいではないでしょうか。
当然のことながら、生真面目な爺さんの指使いは、あくまでも施術の為のもので、性的な歓喜を呼び起こす為のものではありません。
焦れるような苛立ちが、妻の妄想を肥大化させたのではないかと、私は推察するのです。
施術とは言え、直接、肌に触れてくる指の感触は、確かに、夫である私のものとは、違うものであった筈です。
指がそうなら、ましてや、夫以外の男根においては?施術台の上にうつぶせながら、妻が、まだ見ぬ他人棒に思いを馳せたかどうかはわかりません。
いずれにしても、妻はその気になったのです。
私の脳裡に焼きついて離れないのは、岡本氏が、行きつけのほかほか弁当店のパート主婦をたらし込み、ラブホテルで撮影したという凄まじい性交シーンです。
動画は二時間に及ぶ性交シーンを切り取り、八分割にして、更に短く編集したものです。
正常位、座位にバックと、バリエーションに富む体位の中でも、圧巻は、極太の男根が大股開きのマンコを下から力強く突き上げる、背面騎乗位の場面です。
ふがいない話ですが、結婚以来、クンニ以外で妻をイカせたことのない私には、とても、同じ人間の行為とは思えないほどでした。
男根が極太であればあるほど、膣壁での摩擦が大きくなるのは、自明の理です。
動画の中の、四十八歳という弁当店のパートの主婦は、下から岡本氏に羽交い締めにされ、深く、結合されたまま、ビデオカメラの真正面に向かい、Mの字に開脚していました。
摩擦が大きくなれば、膣壁に与える刺激も大きくなる代わりに、それだけ亀頭部分に掛かる膣圧も、強くなるのは当然のことです。
これほどの激しい出し入れをすれば、男根の雁の部分に湧き立つ快感も、相当なものに違いありません。
何故、その快感が、即射精に結びつかずに、延々とピストン運動を続けられるのか、私には、その感覚が分からないのです。
ビデオカメラは、おそらく三脚に固定されベッドのわきに置かれているのでしょう。
出し入れの都度、パートの主婦の三段腹が、個別の肉魂となり、互いにぶつかり合い、大きく波打っています。
引き締まった尻に力を込め、先端で子宮を持ち上げるように、強く、膣奥を圧する瞬間でさえも、岡本氏の男根は、マンコに納まり切らず、悠に、膣口から、七、八センチは、はみ出たままなのです。
引き算をすれば、その余したぶんだけが、私の粗末な物より長い訳で、岡本氏の全長は、十八センチ。
サイトでの自己申告に偽りはなさそうです。
男根のサイズ、セックスの熟達度、温厚な人柄の裏に、時折、見え隠れするSっ気。
妻の相手とするには、完璧な人物でした。
岡本徹也。
四十八歳。
既婚。
造園業。
趣味、特技は、共に寝取り。
好物は、未開発のスレンダーな既婚女性。
ストライクゾーン、四十歳~六十歳。
過去に七十二歳のボール球をホームランしたことも。
好きな色は、大陰唇の紫と、充血して腫れぼったくなったマンコのサーモンピンク。
Pサイズ、全長十八センチ。
P形状、上反り、雁高。
性交時間、自在。
単独男性として投稿した、岡本氏のスワップサイトの自己紹介文の一部です。
なんとウイットに富んだアピール文であることでしょうか。
送信されてきた画像は、二百枚近く。
職業柄、八つに割れた腹筋は、男の私から見てもみごとなもので、反り返った股間の名刀は、先端で臍が隠れてしまうくらいなのです。
正に文武両刀とは、このことを言うのでしょう。
岡本氏と交流を始めて、以前よりも夫婦の絆は、確実に強くなりましたが、より愛情が深まったかと問われると、返事に窮してしまいます。
セックスとは、奥深く、不思議なものです。
一人一人は善良な人間であっても、三人の思いが絡まり合うと、薄汚れた粘液のようなものが、それぞれの心の淵から滲み出し、異臭を放つのですから…
「この前の話だけど、来週の土曜日に決めたよ」
「話って?」
「何を言ってる、二度も念押しをしたじゃないか…
相手様のあることだから、いい加減なことはできないよ」
ここは一歩も引けないところです。
少々、強引であっても、妻の決断をゆるぎないものにしておかなければなりません。
「わかってるけど…
急だったから…」
「大丈夫だよ、真面目で、しっかりとした人なんだ…
それに、会食だけでもいいと言ってくれてる…」
「ほんと?」
「ほんとだよ、勿論、君次第だが…
土曜日、昼前に出掛けて、帰宅は夕方を予定している、そのつもりでいてくれ…」
「教室、お、お休みしないと…」
(真悠子、何を頓珍漢なことを言ってる。
下手な絵手紙など、いかほどのものだ。
ギンギンの他人棒を突っ込まれるかもしれないと言うのに…
)
「詳しいことは、今夜、ゆっくり話すよ…」
「わかったわ…
行ってらっしゃい…」
妻に思いを打ち明けて、四年半、漸く、ここまで辿りついたという感慨がありました。
玄関先に私を送り出したときの様子を見る限り、妻にしたところで、今更、後戻りすることもできない筈です。
妻は、今日一日をどんな思いで過ごすのだろうか。
顧みれば、私が三十二歳、妻が二十八歳、共通の知人に紹介されての結婚でした。
出会いから結婚までは五ヶ月。
それなりにデートを重ねていたので、半見合い、半恋愛の結婚といったところでしょうか。
野球観戦の帰りに、車中で唇を重ねたことはありましたが、それ以上の行為には及びませんでした。
私は、真剣に彼女を結婚相手として考えていましたから、性的な関係について、あまり無理強いはしたくなかったのです。
正直に言えば、稚拙なセックスを披露して、結婚相手となる女性に、嫌われたくなかったのです。
私には、学生時代に一人の女性との体験の中で、ぺニスの形状について、消しがたいトラウマがあったのです。
自己分析すれば、わたしの性癖の歪みは、その頃から生じていたのかもしれません。
手術は思いのほか簡単なものでしたが、心の傷痕は消し難いものでした。
それ以後の私は、女性と対峙したとき、劣等感や、ジェラシーを介在させてしか真の性的な興奮を得られない男となったのです。
妻の婚前の性体験についての詳細は不明です。
無論、処女ではありませんでしたが、男女の契りを結ばないままの私と結婚するくらいですから、セックスに断固とした拘りを持って生きてきたとも思えません。
実際に妻は、結合による絶頂感を未だに知らず、夫婦生活のクンニによる快感だけで、治まりのつく女なのです。
「別に、夫婦生活にマンネリを感じているからじゃないんだ…
僕達だって、もうそんなに若くはない…
君は、まだ、美しいけど、セックスで言えば、夫の僕ではわからない未開発の部分が、躯のどこかに、きっと、あると思うんだ。
この先の夫婦関係を磐石なものにする為にも、それを知っておくことは重要だと思うんだ…」
「そうしないと、あなた…
辛いんでしょ」
「そうだな、この難題から、早く解放されたいよ…
今回がラストチャンスかも…」
「ほんとに食事だけして、帰ってもいいの?」
「当然だろ、君の気に入らない男とそんなことさせられるもんか…」
「それを聞いて、少し安心よ…
なんだか、食事だけじゃ失礼な気がして…」
「心配するな、厭なタイプだと判れば、席を立って、即刻、僕も一緒に帰る覚悟だから…」
「即刻だなんて、大袈裟ね…
事を荒げるようなことは嫌よ…」
「折角、ご馳走を提供してくれた相手には申し訳ないが…
それとこれとは別だ」
「難しいわね…
なるべく、あなたの意に沿うつもりはあるのに…」
岡本氏と会う約束を取り決めてから十日、遂に、決行の土曜日となりました。
妻にとっては、長い十日間であったに違いありません。
その十日間、普段と変わらず家事全般をこなす手際よさの中に、なにかヒステリックなものを感じたのは、私の気のせいばかりではないようです。
妻の回りには、何者も寄せつけようとしない、張り詰めた空気が漂っていたのです。
そういった反面、一段落ついたときなどは、魂の抜けたような上の空の表情を見せることもしばしばでした。
予断を与えたくない為、岡本氏の画像、自撮りのムービーの類いは、一切、妻に見せることをしていませんでした。
妻にとって、何処の誰ともつかない、見ず知らずの男性を否応もなく、夢想せねばならない、宙ぶらりんな状態は、こちらが想像する以上に耐え難いものだったに違いありません。
身心の均衡を保てなくなったとしても、なんら不思議ではないのです。
妻が、自分自身を追いつめれば、追いつめるほど、圧迫された意志は、より強固な意志となり、まだ見ぬ男性への憧憬の念が、やがて心の隅にでも、芽生え始めるのではないかという、淡い期待があったのです。
約束場所のT駅の近くのパーキングに車を入れ、妻と私は、徒歩で駅に向かいました。
ビル街の雑踏の中に、夫婦二人、身を置くと、車中での張り詰めた空気が、幾分にでも和んだ気がしました。
妻の緊張に吊り上がった眼の充血は、まんじりともせずに明かした、昨夜の浅い眠り名残なのでしょう。
駅の北口近くのコインロッカーの側に、すでに画像で周知している岡本氏の姿がありました。
普段、着慣れていないと思われるスーツ姿は、どことなく野暮ったく見えても、長身で短髪の容貌は精悍そのもので、同年の私より、四、五歳は若く見えました。
「やぁ…
野上さん」
向こうも一瞥をしただけで、私であることを悟ったようです。
二ヶ月間のネットでの交流は、無駄ではありませんでした。
「妻の真悠子です…
こちらが、岡本さんだ…」
「岡本です!」
挨拶を返そうとした妻に、岡本氏は、素早く、握手を求める手をサッと差し伸べました。
反射的におもわず、差し出した妻の手は、瞬時にして厚みのある大きな手に奪われ、二度、三度、上下されました。
緊張に凍りついていた妻の血流が、一気に溶け出し、全身を駆け巡り始めたようです。
「真悠子です…」
こわばりが解け、微かに、頬が薄紅に染まっていました会食の席での会話は、けっして、弾んだものとは言えませんでした。
妻は終始、無口のままで、岡本氏の問い掛けにも、微笑みをもって首を振ったり、頷いたりするだけでした。
会食の本意や、いま、妻の置かれている状況を考え合わせれば、多少の気詰まりがあるのは、致し方のないことです。
妻に明らかな拒絶の反応がみられないだけでも、滑り出しとしては上々なのかもしれません。
実際、岡本氏の仕事の失敗談や、学生時代の部活の話、旅行譚は、その人柄ゆえか厭味なところがなく、聞いていて気持ちが和むのです。
コースの料理としては軽いものでしたが、妻は、その半分にも手をつけられない様子でした。
この先の成り行きばかりが気になって、食事どころではなく、頭の中は、半パニック状態だったに違いありません。
いくら平静を装っても、それは、妻の微妙な仕草の中に、はっきりと、見て取ることができました。
普段の妻なら、不行儀にフォークやナイフで、皿を鳴らすことなどある筈もないのです。
心の揺れが、そのまま、指先に伝わり、合鴨を切るナイフを無様に振動させてしまうのです。
自身の指先すら制御できない弱さを悟られたくなかったのか、皿を鳴らす度に、妻は時間を気にする素振りを見せるのです。
皿を鳴らしてしまう羞恥を自意識の中に捉えられても、三分間に、三度、腕時計を見る不自然さには、まるで、気づいていない様子でした。
メーンディシュが下げられ、デザートが運ばれてきました。
事前の打ち合わせ通りに、岡本氏が席を外して、ロビーのほうに消えて行きます。
「どうだい?感じのいい人じゃないか」
「そうね…」
「じぁこの後、いいんだね?」
「だめ…
今日は嫌よ…」
「どうして?」
「私、気に入られていないんですもの…」
「バカな…
そんなこと…」
「わかるのよ…
きっと、陰気な女だと思われてる…」
「ここまできて、帰るって言うのか?」
「お願い…
断られる前に…
断って…」
(真悠子…
なんて愛しい女なんだ。
君は、男のセックスというものを知らな過ぎる…
相手は、もうビンビンなんだ…
断る筈なんてあるもんか…
)岡本氏が戻ってきました。
後は、彼に委せるしかありません。
「野上さん、デザートを済ませたら、ここを出ませんか…
上に部屋を取りました。
なあに、少し、呑み直すだけでもいいじゃないですか…
奥さん、いいでしょ?」
「はい…
そんなには頂けないけど…」
部屋は十八階のダブルルームでした。
すでにルームサービスの用意したシャンパンと、燻製の薄切り肉のオードブルが、テーブルに置かれています。
営利を目的にした乱交パーティーや、ベテラン夫婦との3Pなどには、数多く参加経験を持つ岡本氏ですから、このようなセッティングはお手の物なのでしょう。
部屋に足を踏み入れたとき、中央にあるダブルベッドを見て、私は激しく動揺しました。
もはや、これは夢や妄想ではありません。
妻は遂に、この場所で他人棒を受け入れることになるのです。
妻も同様の思いだったのでしょう。
和み掛けた三人の間の空気感が一変しました。
妻は凍てついたように、茫然と、ソファの側に立ち尽くしています。
今はもう、感慨に耽っている場合ではありません。
打ち合わせ通りに事を運ばなければならないのです。
部屋に到着したら、妻と岡本氏を残し、真っ先にシャワーを浴びるように、私は、事前に指示をされていました。
「岡本さん、シャワーで、先に一汗流したいのですが、構わないですか?」
「どうぞ、どうぞ、遠慮なく…
じゃあ、乾杯は後にしますか…
奥さんも腰を下ろして下さい」
「あなた…」
ここに居て欲しいと哀願するような目で、妻が私を見ています。
「なんだい?」
「いきなりシャワーだなんて…
非礼よ…」
小さく、語尾が消え入りそうな声には、もはや、私を非難するほどの力さえ込められていないようでした。
「いいんです、いいんです…
僕も浴びようと思ってたんです。
どうです?よかったら、奥さんも…
ご一緒に…」
故意にではないにしろ、ご一緒にとは、誰とご一緒なのか、どちらとも取れる、微妙な言い回しでした。
「いいえ!私は一人で…」
妻が、岡本氏の言葉を振り払うように即答したのは、ご一緒にを、危ういほうの意味として捉えたからに違いありません。
これで、妻は、たとえ一人であろうと、この部屋の中で、シャワーを浴びることを確約した形となったのです。
「奥さん、我々三人は、もう、アラフォーのいい大人です…
それぞれに、色んな思いはあるだろうが、目的は同じじゃないですか…
僕は、いいご縁だと思っているんです。
人生に一日くらい、こんな日があってもいいでしょ?」
「わかります…
あなた、浴びてらっしゃったら…」
岡本氏と妻をソファーに残して、私はバスルームへ向かいました。
何百組の夫婦を相手に、亭主の前でイカせまくったなどと豪語する単独男性より、ネットで事前に、初心者夫婦は、今回が、四組目だと打ち明けてくれた岡本氏に、私は誠実さを感じていました。
私がシャワーを浴びる間に、妻の気分を、少しでも、リラックスさせようとする心づもりなのでしょう。
寝取りの極意として、岡本氏から聞かされていた話があります。
女の緊張モードは、イコール、セックスモードなのだと。
つまり、女のセックスは緊張した時点から、すでに、始まっていると言うのです。
会食中から半勃起状態にあった、慎ましやかな一物にシャワーをあてながら、私は、彼の言った極意の言葉を思い返していました。
緊張に躯をこわばらせたり、指先を震わせている女の大半は、すでに、マンコを濡れ始めさせているそうなのです。
そうであれば、私が半勃起状態だったように、会食中から、妻のマンコに異変が生じていたとしても、不思議ではありません。
能動的にセックスを欲していなくても、女は、追いつめられた状況下では、無自覚のまま、マンコを濡らすものなのかもしれません。
無論、岡本氏ほどの経験者なら、そんな妻の異変を見逃すことは、なかった筈です。
岡本氏は、会食中、妻の内面を察知したうえで、やれるという確信を抱いたのではないだろうか。
そう言えば部屋へ入ってから、妻に対しての腫れ物を触るような態度は見受けられなくなりました。
やれると確信した以上、中途半端な気遣いは、返って、妻の覚悟を鈍らせると考えたのもしれません。
落とすときは、強引に、一気に落とす…
。
それが極意の一つだとも。
(大丈夫なのだろうか、悠長に構えて、シャワーなど浴びている場合ではないのかも…
)私は、気もそぞろにシャワーを止めて、静かにバスルームを出ました。
少し迷ってから、トランクスは穿かずに、ガウンだけを羽織りました。
壁を背にしたL字型のソファは、脱衣所からは見えません。
カーテンが閉められたのか、先ほどと変わらず、照明は煌々としているのに、部屋中が、なんとなく薄暗いのです。
私は足元に、なにやら白いものを認めました。
近寄ると、それはワイシャツでした。
ソファのほうを見た瞬時、膝頭が震えました。
着衣の妻は、上半身裸の岡本氏の膝に後ろ向きに座らされ、その首筋にキスをされていたのです。
私に気づいた妻は、岡本氏の唇から逃れようと、前屈みになり、膝上でもがく仕草をみせました。
羽織っていた白いジャケットは、ソファの背に掛けられ、濃紺のワンピースの裳裾が、わずかにたくし上げられています。
漸くのこと、片足で床を捉えた妻は、素早く、裾を整えながら、ソファーに座り直しました。
どっかりと、ソファーに腰をを沈めていた岡本氏は、両手を広げたままの格好で、余裕のある笑みを浮かべています。
妻は膝上から降りると、私側ではなく、躯を小さく縮ませながら、岡本氏の肩の辺りに顔を隠すようにして、彼の向こう側に座り直していました。
L字型のソファーの、角より彼方側に妻と岡本氏、私が自然と一人、此方側に座る形になりました。
約束が違う…
経緯はどうあれ、私の居ない間に、こういう事態にまで至ってしまったことが、私には不満でした。
「岡本さん、乾杯はしないんですか…」
私は、少し強い口調で言いました。
「そうでしたね…
奥さん、呑まれますか?」
「私は…
もう」
「だったら、先にシャワーを浴びて下さい…」
「あなた…
そうさせて貰ってもいい?」
「君も疲れただろう…
さっぱりしてくるといいよ…」
倫理的な問題はあっても、他人の妻や恋人を寝取ってみたいという男の心情は、至ってノーマルなものです。
一方、妻の身を他人に委ねたがる男の内面について、女性はそれほど寛容ではありません。
なぜなら、大抵の女性は、その歪んだ内面に潜む変態性を、本能的に、忌み嫌うからです。
女性から愛されるべき資質は、常に寝取る側の男性にあって、寝取られる側のアブノーマルな嗜好は、つまるところ、侮蔑の対象にしかならないものです。
「厭がって、いませんでしたか?」
「抵抗されましたが、厭がってはいないと思います…」
「キスまでは許したんでしょ?」
「首筋だけですよ…」
妙な安堵感がありました…
「何か話しましたか?」
「ここへ来た理由を訊ねましたよ…」
「なんて言ってました?」
「根負けしたと…
(笑)」
「他には?」
「飼い犬の話を少し…
…
ついでだから、夫婦生活について訊いてみたんだが…
話したがらなかった…」
「そうですか…」
「野上さん…
奥さんに、貴方の尻の穴を舐めさせたことありますか?」
「誤解されてるようですね…
妻は断じて、その種の女じゃ…」
「そうでしょうね…
気を悪くされたなら、申し訳ない…」
バスルームから岡本氏の鼻唄が聞こえてきます。
陽水のリバーサイドホテル。
いかにも彼らしい選曲で、苦笑せざるを得ないのですが、いい気なものです…
「真悠子、大丈夫かい?」
「シャワーを浴びて、気分が落ち着いたわ…」
「無理にとは言わないが…」
「ううん、いいの…
それより、さっきはごめんなさい…
私、あなたの意に沿わなければって…」
「なにも、君が悪い訳じゃないさ…」
「だって、あなたの居ないときにあんなこと…」
「厭なら、私のほうから断ってもいいんだよ…」
力なく微笑みながら、妻が首を横に振ります。
「正直、岡本氏のことをどう思っているんだい?」
「凄く、強引な人…
どうせ、今日一日だけのことだから…」
「そんな投げ槍な気持ちなのか?」
「こんなこと、一度切りにして欲しいだけ…
厭なタイプの人じゃないわ…」
「よかった、それを聞いて肩の荷が降りたよ…」
「あなた…
傍を離れないでね。
正直、怖いの…」
「離れるもんか…
ずっと、傍で見ているよ…
ねぇ、真悠子…
頼みがあるんだ…」
「なんなの?」
「さ、触らせてくれないか…」
「駄目よ…
彼がくるわ…」
「脱がなくていいんだ…
隙間から触るだけなんだ…」
ソファーに腰掛けた妻の前に跪くと、ガウンの裾をはだけて、私は、右足を大腿部ごと抱え上げました。
そうしておいて、ショーツのクロッチ部分に指を掛けると、有無を言わせずに、グイと横にずらしました。
「どうしたの!あなた…」
密度の濃い、さわさわとした恥毛が、ショーツから、丁度、真半分、はみ出ています。
私は、大陰唇のあわいに二本の指を寝かせ、そろそろと上下させました。
襞を押し開くまでもなく、合わせ目の下部に、米粒ほどの白濁の玉が、垂れ切れずに留まっています。
むにゅにゅ私はそのまま、指を挿し入れました。
(真悠子、いつから、こういう状態なんだ…
始まらないうちから、こんなに濡らしてしまうなんて…
)こね繰り回す指には、なんら抵抗感もなく、湯のような粘液が、間接に纏いついてきます。
「もう、いいでしょ…
見られたくないわ…」
バスルームの鼻唄が止みました…
「真悠子…
さっき、厭なタイプじゃないって言ったね…」
「言ったわ…」
「好きなタイプなの?」
「どうかしら…
まだ、よく知らない人だから…
見た目は、凄く、好きだけど…」
腰にバスタオルを巻いた格好で脱衣室を出てきた岡本氏は上機嫌でした。
そして発した第一声は…
「岡本徹也!四十八才、今まで生きてきて、今日が三番目に幸せな日です…
奥さん、宜しくお願いします!」
ソファーの妻の前で、深々と頭を下げると、姿勢をそのままに、右手を差し出しました。
妻は少し困惑しながらも、はにかむように微笑んで、私を見ています。
私は黙って頷きました。
「こちらこそ…」
妻がその手を握り返します…
意を決したというのではなく、仕方なく、相手の調子に合わせたというふうでした。
(さすがに、女を扱い慣れている…
場を和ませる為の彼一流のやり方なのだろう。
それにしても、することが若々しい…
随分、年増女を泣かせてきたことだろう)
「よかったです…
握手されずに、ごめんなさいって言われたら、どうしようかと思いました…」
「驚きました…
急にあんな大声で…
でも、どうして三番目なの?」
「すみません、三番目は中途半端ですよね…
一番は、子供が生まれた日です。
それから、父親に初めて仕事を任され日…
そして今日…
奥さんにお会いできた日…」
「困るわ…
そんな凄いところへ入れられたら…
私なんて…」
「岡本さん…
あまり、プレッシャーを掛けないでやって下さいよ…」
「本心です…
御主人の前で言うのは気が引けますが、生まれて初めて一目惚れしました…」
(一目惚れはないだろう…
妻のマンコ画像や、全裸のムービーを、散々、送ってやったじゃないか…
真悠子、どうした、満更でもなさそうな顔をして…
)
「度の過ぎたお世辞は、あまり、うれしくないわ…
私は見た目も中身も、もう、叔母さんよ…」
「お世辞じゃありません…
御主人、奥さんをお姫さま抱っこしてもいいですか…」
「だめよ…
そんな若い人みたいなこと…」
「真悠子…
いいじゃないか!…
今日は夫婦にとって特別な日だ…
すべて、彼に任せなさい…」
「御主人…
照明のほうを頼みます…
奥さんをベッドに運びますから…」
岡本氏は造作なく軽々と抱え上げると、大股で、四、五歩進み、そのまま一緒にベッドへ倒れ込みました。
「あぁ…
あなた…」
「真悠子、気持ちを楽に持ちなさい…」
私は駆け寄り、ベッドの傍らに跪づくと、その縁に手を掛けました。
すでに、岡本氏の両手が、妻の頬を挟んでいます…
浅黒く精悍な容貌に反して、岡本氏の愛撫は、丹念で、尚且つ繊細でした…
有無を言わせぬ大胆さで、荒々しさを見せたのは、妻と共にベッドへ倒れ込んだ、最初の数分間だけでした。
大腿を大腿で挟み込み、自らの体重で、妻の自由を奪いながら、両手で頬を固定してのキス…
真一文字に閉じられた妻の唇をなめくじのような舌が、行き場を求めて這いずり回っていました。
身動きもならない妻は、眉間に皺を寄せ、大きく鼻孔を膨らませています…
このような場数は、何度もくぐり抜けてきたとでも言わんばかりに、岡本氏が私を見やり、片笑っています…
尖らせた舌先が交互に、左右の鼻孔を突っつき始めました…
あまりの息苦しさに耐え切れず、妻が口元を弛めた、その瞬間、舌先が唇をめくり上げました…
めくり上げられた妻の上唇は、間髪を入れず、岡本氏の唇に挟まれて、強く吸引されるのです…
吸引され、無様に延び切った唇の裏を、今度は、舌が左右に這いずります…
固く尖らせた舌先が、上唇を持上げ、跳ね上げるたびに、妻の血色のよい歯茎が剥き出しにされました…
口元の弛みと相俟って、妻の四肢のこわばりも次第に解け始めたようです…
岡本氏は、漸く、両手を頬から外し、肘と膝で自らの体重を支えて、妻への圧迫を解除しました。
唇を執拗に重ねたまま、岡本氏は尻を上げ、自らの手で腰のバスタオルを取り去ると、器用にも、妻のガウンの胸元を大きくはだけて、その両肩を露にしました…
圧することをやめたぶん、岡本氏の両手は、紛れなく、自由を獲得したようです…
下半身に目をやると、妻の太股の間に片足が割り込み、丸出しになったショーツの低部には、膝頭がぴたりと密着されていました…
妻の肌に、直角に立てるようにして置かれた自在の指先が、小さな円を描きながら、妻の脇腹と腰骨の間をゆったりと往復しています…
腰骨がビクンと跳ねる上がる、その都度、妻の股間に密着した膝頭がグイとせり上がりるのです…
強固に舌の侵入を拒んでいた歯の合わせ目が、遂に、開いたようでした…
尖らせた舌先が、なんの障壁もなく、妻の口中の奥深くまで、傍若無人に出し入れされているのです…
妻の腰骨が連続して波打っています…
圧迫から解放された妻の両手が、ためらいがちに、岡本氏の首に巻かれました…
岡本氏は、妻が息継ぎの呼吸を大きくする一瞬を見計らい、開いた上下の歯の間に、すぼめた唇の先端を押し込めました…
口の中に、口を入れる!予想だにしなかった行為に妻は驚愕したのでしょう、下顎が小刻みに震えています…
正直、このような遣り口は、私たち夫婦のキスの概念にはありませんでした…
無論、夫婦ですから、泳がせた舌の先端が、求めずして偶然に触れ合ったとき、暗黙の了解のもと、軽く擦れさせ合うくらいのことが、皆無だったとは言いません…
病的な潔癖症ではなくとも、元来、妻は衛生面において、神経質な女なのです…
夫婦生活においても、入浴前の私の身体には、一切、触れようとしませんでしたし、ましてや、私の求めなどには、断固として応じてくれませんでした…
もっと言えば、クンニには寛容でも、ぺニスを口に含むことには、少なからず抵抗があるようなのです。
それらのことを、事前に岡本氏に告げていなかったことを、私は、今更ながらに後悔していました。
吸引され、咬まれ、或いは舐め上げられ、唾液にまみれた口紅は、本来の唇の範囲を逸脱し、妻の口まわりを薄赤く、醜く、汚しています。
いま、手鏡を見せようものなら、自身が面妖の無惨さに、妻は泣き叫ぶやにしれません。
化粧が斑に剥げ落ちるほど舐めまわされた挙句、追いつめられた口中の舌は、いまや、逃れるスペースを狭められ、咽喉を塞いでしまうほどに、小さく、固く、その奥に折り巻かれているに違いありません。
「うっ…」
ヌルジュボッ!遂に、岡本氏の唇が、逃げ惑う妻の先端を捕らえて、一気に吸い込んだようです…
実際の口中は見えなくとも、舌の根が抜けんばかりの強烈な吸引であることは、想像に難くありません…
口に口を入れられ、飲み込むこともできずにいた、自らの唾液溜まりが、だらしなく、妻の唇の端から垂れ始めています…
そのとき、私は不思議なことに気づきました…
二人は、お互いの後頭部に両手を当てがい、お互いが、お互いの顔を強く引きつけ合っていたのです…
私は自分の目を疑いました…
引き寄せ合い変形した岡本氏の唇の合間に、彼の唾液まみれの舌を、狂ったように吸い立てゝいる妻の唇を見たのです…
あろうことか、吸引していたのは妻のほうでした。
厳密に言えば、お互いが交互に吸い立て合い、また、二枚重ねて同時に吸い立て合ったりしていたのです…
妻と岡本氏がベッドインしたのは、午後一時七分…
携帯画面で確認した時刻ですから、寸分、違わず正確なものです。
皆様には、この午後一時七分という時間を記憶に留めておいて頂きたいです…
私には長く思われた、二人のキスの時間は、十二分…
これは、前戯を含めた、私たち夫婦のセックスに要する、通常の時間の、倍とまでは言いませんが、ほぼ、それに匹敵する時間です。
私は三十代の半ば頃、一年半にわたり、妻との性交時間を秒単位で記録し、統計に取っていたことがあります…
無論、妻には秘密の私、個人の愉悦を目的としたものです。
さすがに情けなくなり、途中で投げ出しましたが…
いまでも、五十一回に及ぶ妻との情交を克明に記した、挿絵入りのそのノートを、暗い墓標を眺めるように読み返すことがあります…
《マニアックな話に感情移入して頂けて、嬉しいです。
…
異端の性癖を理解して下さる方が少ない中で、タイミングのよいコメントは、書き手としては、心強いものです…
岡本氏は妻から唇を離すと、股間に宛がっていた膝頭を満足そうにそろりと撫でました。
たぶん、妻の愛液のぬめりを膝頭に認めたのでしょう…
「奥さん、ショーツを汚すといけないから…
脱ごうか…」
早漏亭主との稚拙なセックスに不満さえ感じない、そんな堅物主婦の情欲に火をつけたという自負が、声に余裕を生んでいるようです。
片袖の抜けたガウンが、仰向けた妻の臀部の辺りに丸まってごわついています…
剥き出しの白い肩が、私にはなんとなく哀れに見えました。
激しい口淫の名残なのか、口のまわりだけが、茹でたての蛸のように腫れぼったく色づいています。
岡本氏はガウンを剥ぎ取ると、片手でショーツの前を引き下げました。
両方の腰骨から、Vの字に拓かれたショーツの裾野に、妻の濃密で光沢のある恥毛が、小さく顔を覗かせています。
「奥さん…
汚しちゃってるよ…」
妻が両手で顔を覆いました…
深い情愛の慈しみの愛撫によってもたらされた必然の汚れではないのです。
このショーツの染みは…
淫靡なる舌の横暴に屈し、唾液の舌を、自らが求めて吸い立てた、その高ぶりよってもたらされたものなのです。
「見ないで…」
岡本氏が苦笑いながら、更に、引き下げようとした時、ふいに、妻が片尻を浮かせました…
「早く…
下ろしてっ」
夫の眼前で、ショーツの染みをあからさまにされる人妻の羞恥とは、一体、どのようなもなのだろか…
「あぁ…
あなた…」
一気にずり下げられ、ねじれ丸まったショーツが足首から抜かれました。
AV男優さながらの真っ赤なビキニパンツ姿の岡本氏は、仰向けた妻の躰に跨がり、更には、その腰を持上げ、上体を反らさせました。
「ブラジャー、外しなよ…」
尻と腰を浮かせられた体勢で、妻は胸を一杯に反らせ、背中にできた空間に両手をまわし、ホックを外します…
そして躯をよじり、片手をブラジャーのカップに宛がったまま、肩紐を交互に腕から抜き取りました。
「胸を隠すな…」
夫婦生活では、知り得なかった凄まじいばかりの口淫…
その動揺も治まり掛けて、いま、妻は軽い催眠の状態にあるのかもしれません。
妻は肩紐をくるりと指にからませると、その指を力なくベッドへ引きずらせました。
ブラジャーが、はらりと外れ、脇下を滑り落ちました。
弾力を失いかけた、やや、垂れ気味の乳房が、遂に、数時間前、出会ったばかりの男の前に顕になったのです。
「綺麗だよ、奥さん…
想像してた通りのセクシーな躰だ…」
全裸に剥かれた妻は、首を左右に振り、岡本氏の視線から逃れるように、彼に背中を向けて、私の正面へと向き直りました…
このような場合、馴れ親しんだ者の正面に顔を向けるのは当然のこととしても、女としての羞恥の対象となる男は、背中側から視線を送る、岡本氏に相違ありません。
少なくともこの部屋の中においては、すでに、私は妻の意識の中で、性的な対象から外れてしまったようです…
「これこそ、成熟した女性の美の極致だ…
旦那が羨ましい…」
そんな私の気持ちを知ってか知らずか岡本氏は、くの字に横たわる妻を背後から抱き寄せ、その耳元で、歯の浮くような言葉を囁くのです…
「どう思おうと、ご自由ですけど…
私は、そ、それほどの女じゃ…」
世間ずれしていない妻は、男の儀礼的な誉め言葉に免疫がありません。
それ故、男の言葉の裏にある真意を読めず、それが、女を落としたいが為の手練手管だとは、気づかないのです…
「奥さんは、自分自身を知らな過ぎる…
こんなに美しいのに…
悲しいよ…
信じて貰えなくて…」
岡本氏は背後より腋の下に差し入れた手で、苛立ったように乳房を揉みしだきました…
「そ、そんなの買い被りです…」
「どうせ、どこの馬の骨だか分からない男の言うことだしな…」
「そんな!それは、お互い様でしょ…
それに、私、信じないなんて一言も…
分かりました…
貴方のお気持ち、素直にお受けするわ…」
「自分を美しいって認める?」
岡本氏が私に目配せをして、ニヤリと笑っています…
「ええ…
貴方を…
信じて、認めるわ…」
「俺が一目惚れしたことも?」
「信じます…」
「可愛い人だ…」
岡本氏が妻の額に唇を軽く押しあてました…
先ほどの淫靡な口淫を、二人して忘れてしまったとでもいうように…
それに、魔法を掛けられようなあの妻の饒舌は、一体、なんだったんだろう?私はベッドの下で、口出しもならず、薄皮を剥ぐように羞恥の皮を一枚、一枚剥がされてゆく妻の変容ぶりを、一人、疎外感をもって眺めているしかありませんでした。
岡本氏の舌が丹念に妻の乳首を舐め上げています…
私はおもわずベッドに身を乗り出し、妻の手を握り締めました…
「あなた…」
「真悠子…
一杯、可愛がって戴こうね…」
妻が駄々っ子のように首を振りました…
「奥さん…
ご主人の期待を裏切らない為にも、誠意をつくさせて貰うよ…」
腋の下から絞り上げるようにして鷲掴んだ乳房の先端を、岡本氏が、乳輪ごとガバリと呑み込みました。
そして唇を窄めながら、顎をゆっくりと引いていきます…
垂れ気味の乳房は、その先端を強く吸われ、尚更、丸みを失い、三角のテントを張りつめたような見るも哀れな姿に変形していきます…
「あぁ…」
妻がのけぞった瞬時、岡本氏の唇から、完全に勃起した乳首が勢いよく弾け出ました…
乳輪の小さい、黒ずんだ乳首は、厚みのない胸に不釣り合いなほど大きく、夫の私がどんなに贔屓目に見てさえ、けっして、美乳などと言える代物ではないのです…
「綺麗な胸だ…
自分の美しさを認めてくれて、嬉しいよ…
いままで、気づかなかったなんて…
勿体ないよ…」
首筋に舌を這わせる岡本氏は薄笑いなから、眼をサディスティックに輝かせて、私を見ています…
「じ、じ、自分の美しさを…
他人に…
ひけらかしたくなかっただけです…」
岡本氏がペロッと舌を出すのが見えました。
「他人に…
?奥さん、ズバリ経験人数、何人?…」
血管の浮き出た首筋の一点を、狙いを定めたかのように岡本氏が吸い立てます…
「さっ…
さ、三人…」
結婚して十六年間、夫である私にさえ知らされなかった、自らの過去の性体験を、たった数時間前に出会ったばかりの男の問い掛けに、妻はいとも簡単に、躊躇いもなく、答えたのです…
「旦那を含めて…
三人?」
妻は息を一気に吐きながら、大きく頷きました…
「ふふっ…
誰とのセックスが、一番、好かった?」
「あっ…
うっ…」
真っ赤なビキニパンツの鋼鉄の膨らみが、妻の股間に、その裏筋を宛がって、グリグリと押し回され始めました…
「真悠子!岡本さんに失礼じゃないか…
ちゃんと答えなさい…」
岡本氏は、両腋下から手を差し入れて、妻を引き寄せると、いっそう、力強く腰を回転さました…
「くうっっ…」
「奥さん、正直に言ってよ…」
全身を突っ張らせた妻が、狂ったように首を横に振り立てています…
「真悠子…」
妻が握り締めていた私の手を振り退けて、岡本氏にしがみつきました…
そして、必死の形相で、首を曲げて、岡本氏の頬に、自らの尖らせた唇を押し当てたのです…
「キスして欲しかったら言いなよ…
誰が好かったんだ」
「に、二番目の人!」
結婚当初、不甲斐ない自分のセックスの念押しになることを恐れ、私は、妻の過去の性体験を聞けませんでした。
二番目の人がどこの誰で、妻がどのようなセックスをされていたのか、今となっては知る由もないことです…
真悠子よ…
君は純真なのか、それとも、私への気遣いを忘れてしまうくらい、すでに岡本氏の性戯に翻弄されてしまっているのか…
「ご主人、知ってたのかい…
?」
「お恥ずかしいが、初耳です…」
「いけない奥さんだ…
旦那を落ち込ませちゃて…」
「違うの!違うのよ…
あぁ…
優しいの、主人が一番、優しいわ…
あぁ…
あなた…」
「でも、セックスは、二番目が好かったんだろ…」
「少しだけよ!主人より、少し、好かっただけよ!あぁ私、どうかしてるわ…」
「ふふっ、やっぱり、好かったんじゃないか…」
「貴方が!岡本さんが、いけないのよ!」
「奥さん…
徹也って呼んでよ…」